国語に関する世論調査

文化庁は毎年、「国語に関する世論調査」を行っています。
先日(2020年9月25日)、令和元年度の調査結果が発表されました。ニュースでも取り上げられ、「国語の乱れについての意識」や、「浮足立つ」「敷居が高い」などの慣用句の使われ方について、調査結果が報じられましたので、ご存知の方もいらっしゃることでしょう。

この調査は国語に関する国民の意識や理解度を調べるため、16歳以上の男女に対し、言葉遣いや敬語についての意識、メールの書き方、読書、表記、ら抜き言葉など、毎年観点を変えながら行われています。

エッセイを書く者として気になるのは、毎年言葉を変えて行われる慣用句の意味の調査です。以下の例をご覧ください。

●「敷居が高い」の意味は、次のどちらでしょうか。
ア)相手に不義理などをしてしまい、行きにくい 
イ)高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい
調査で、ア)を選んだ人は29.0%、イ)を選んだ人は56.4%でした。
辞書等で主に本来の意味とされてきたのは、ア)のほうです。

●「浮足立つ」の意味は、次のどちらでしょう。
ア)喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている
イ)恐れや不安を感じ、落ち着かずそわそわしている
調査で、ア)を選んだ人は60.1%、イ)を選んだ人は26.1%でした。
辞書等で主に本来の意味とされてきたのは、イ)のほうです。

たしかに、「あのレストランは高級で敷居が高い」「連休を前にして浮足立つ子供たち」などと使ってしまいがちです。しかも、両方とも、過半数の人が本来ではない意味で使っている現実を見ると、本来の意味を知る機会も少ないことになります。

言葉というものは、時代と共に変化していき、その流れは止められません。上記例の「敷居が高い」は、70歳以上では本来の意味で使う人がわずかに多く、40代以下では異なる意味を使う人が40ポイント以上の差をつけて断然多いという結果でした。
使い方が変化しているうちに、変化後を使う人が多数派になり、一般に広く受け入れられていく。ですから、「本来の意味ではない。間違った使い方をしている!」と目くじらを立てても、元には戻れません。

けれども、エッセイを書く者としては、やはり本来の意味で使いたい。違う意味で使うとしても、本来の意味は知っていたい。そう思います。
そのためには、なるべく辞書を引く、それに尽きるでしょうか。そして、こうした文化庁の調査にもアンテナを張っておきたいものです。

文化庁のウェブサイトより、令和元年度の調査の2例を部分引用しました。