気になる言葉(11) 危険性が高い? 大きい?
ある文章のなかに、「……事故にあう危険性が大きい。今後はさらに注意して……」というくだりがありました。
ふと気になりました。「危険性が大きい」? 「危険性が高い」という言い方のほうが、私にはしっくりきます。とはいえ、「危険性が大きい」も間違いではないように感じます。どちらでもいいのでしょうか。どちらが多く使われているのでしょうか。
「危険性 大きい 高い」というキーワードで検索して、いろいろ調べたところ、次のようなことがわかりました。
「危険性」は「高い」という言葉と一緒に使われるが、たとえば、「歩く」とか「かわいい」という言葉とは一緒に使われない。「一緒に使われる仲間の言葉」のことをコロケーションと言う。
このコロケーションを調べるには、コーパスという「言葉の膨大なデータベース」が役に立つ。日本語のコーパスは、国立国語研究所の『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)が最大で、書籍全般、雑誌全般、新聞、白書、ブログ、ネット掲示板、教科書、法律などのジャンルにまたがって1億500万語のデータが収納されている。
簡単に言うと、言葉のデータベース(コーパス)を使うと、「危険性」と「高い」が一緒に使われている文章を拾い出すことができるのです。
『現代日本語書き言葉均衡コーパス』 の簡易版「少納言」は登録不要・無償で使えるので、試してみました。
コーパスの検索ワードとして、「危険性が高」を入れてみました。「危険性が高い」で検索すると、「危険性が高くなる」や「危険性が高まる」などが省かれてしまうからです。続いて「危険性が大」を調べ、もう一つ「危険性が強」も検索してみました。その結果、
「危険性が高」を使った文章は118件
「危険性が大」を使った文章は21件
「危険性が強」を使った文章は4件
表示されました。
世の中の文章では、「危険性が高い」という言い方のほうが、「危険性が大きい」よりもだいぶ 多く使われていることがわかりました。「危険性が強い」は一般的ではないようです。
ただし、この『現代日本語書き言葉均衡コーパス』が網羅するデータは、2008年まで(ジャンルによっては2005年まで)ですので、その後変化している可能性はあります。
言語学ではさらにいろいろな観点から詳しく調べるのでしょうが、今回の私の調査は、コーパスを使ってみたことに満足して終了となりました。
〈参考にしたサイト〉
国立国語研究所「ことば研究館」ことばの疑問より「大きい」「高い」「強い」
国立国語研究所「コーパスポータル」