エッセイと仲間
エッセイは一人で書くものです。自分の思いを紙に書けばいい。書くということは個人で行う作業です。
ところが、エッセイ教室には長く通い続ける方々が大勢います。教室を辞める時は、書くのを辞める時という方も多い。それはなぜなのでしょうか。
エッセイ教室には、自分の作品の読者がいる
エッセイを書くことは一人の作業とはいえ、一人でエッセイを書き続けるのは、むずかしいことです。すでに書く媒体が決まっていて、締め切りもあって、編集者が催促してくれるような場合は別ですが、読者がいないのにエッセイを書く、または書き続けることは、よほどの強い意志がない限り不可能と言えましょう。
ところが、エッセイ教室に来れば、まず教室の仲間が読者になってくれます。しかも、ただボーッと読むだけの読者ではありません。感想や意見を言ってくれます。もちろん、いい意見ばかりではありません。「この意味がわからない」「ここの順番を変えたら、もっとわかりやすくなるのではないか」などの、読む力のある読者たちです。その上、仲間ですから愛情のある意見を述べてくれます。
エッセイ教室はプロの読者がいる環境なのです。仲間が、書き続ける原動力になるのです。
成長する合評力
教室に入ってすぐの方は、「他人の作品を批評するなんて、そんな難しいことできません」と言います。
けれども、作品を読むとなにか感じるものです。
・おもしろかった
・つまらなかった
・同じ体験をしたことがある!
・この部分がよくわからない
そういう第一印象はあるはずです。それが、合評の第一歩です。
教室の在籍期間が長くなると、その感想がだんだん変化していきます。同時に自分もエッセイを書いているので、書くときの注意点、悩む箇所、展開方法が実感としてわかってくるのでしょう。
・このエピソードの順番を変えればもっとわかりやすくなると思います
・どこかに山場を作った方が読者は引き込まれます
などと、だんだん突っ込んだ感想が生まれるようになります。
合評力の成長のようすは、講師の席から見ていて、大変頼もしく、うれしいものです。そして、それが、書く力に繋がっていくのが、作品を見ているとよくわかります。いい方向へのスパイラルが起こり、エッセイ教室に通うことの楽しさを感じるようになるのです。