手書きか、パソコンか

エッセイを書くときは、手書きですか? それとも、パソコンを使いますか? 
私の関わっているエッセイ教室では、だいたい次のような比率です。
全体を10人とした場合、
 パソコン  7.5人  
 手書き   2.5人 
手書きの中には、手書きで仕上げてから、清書だけパソコンという方もいます。
エッセイを書き始めたとき、すでにパソコンに馴染んでいた方はほぼパソコンを使用し、そうでない方は手書きのようです。

パソコンの一番のメリットは、書き換えるのがラク、ということでしょう。削除したり、途中に書き加えたり、場所を入れ替えたりなどが、手早くできます。手書きではこうした変更が大変。提出用の清書が仕上がるまでに、何度も書き直し、その上清書中に間違える可能性もあるので、こすると消えるペン「フリクション」が人気です。
どちらにしたほうがいい、ということはないと私は思っています。手書きが好きであれば、手書きで書く。パソコンのほうが書きやすければ、パソコンで書く。それでいいのではないでしょうか。

ある教室のAさん。パソコンは仕事で使っていたので、キーボードの操作は得意ですが、何年も手書きの原稿を提出していました。それが、あるときパソコンで作品を書いてきました。手書きでは何度も辞書を引いて漢字を確かめなくてはならず、小さな字を見るのもつらい。だんだん億劫になってきたので、パソコンに切り替えたとのことでした。
切り替え後の最初の作品を読んで、教室では次のような感想が出ました。
「いつものAさんらしさがないですね。違う人の文章みたいです」
「今までの文章のリズムと違いますね」
私も同様のことを感じました。読書家のAさんは語彙が豊富で、また発想もユニークです。ほかの人にはまねできない言葉遣いや、独特のリズムがあります。
それなのに、その良さがなくなってしまいました。
ご本人によれば、
「パソコンで文字を打つと、次の言葉の候補がたくさん出てきて、それを使ったほうがいいのかと思って、使ったのもある。あと赤い波線が出てくるので、気になって……」
ということでした。

たしかに、ワードで文字を打っていると、漢字の候補だけでなく、次に続く言葉の候補もいろいろ出てきます。赤い波線で入力ミス?と問われると自信がなくなります。それらのせいで、Aさんの文章のリズムや言葉遣いが変わってしまったようでした。
その後、何回かパソコンで書いていくうちに、Aさん自身も慣れたのでしょう、今までの文体やリズムが戻ってきて、教室のみんなは(きっとご本人も)安堵したのでした。

手書きからパソコンに変えることで、その人の持ち味を失ってしまうのでは、元も子もありません。パソコンでの執筆に変える際には、ご注意ください。