中学生とエッセイ
あるエッセイ教室の方から、中学3年生の国語の問題集のコピーを見せてもらいました。塾の講師をしている方で、この内容をどう思うかと聞かれました。
見開きのページで、「エッセイを書く」という単元の練習問題です。
これまでの中学生活で自分が体験したことを振り返りながら、6つの問いに答えていき、それをもとにして、最後にエッセイを書くという流れになっています。エッセイの字数は決まっていません。
6つの問いは次の通りです。
1)これまでに体験したことのうち、特に強く心に残っていることは何ですか。
2)それは、いつ、どんな時のことですか?
3)そのことが、特に心に残っているのは、なぜですか?
4)そのことを振り返ってみて、新しく気づいたことは何ですか?
5)そのことに気づいたきっかけは、どんなことですか?
6)それは、自分にとってどんな意味を持っていますか?
この6つの問いに合わせて書き出したことをもとにエッセイを書くのは、なんだか難しそうではないですか? そもそも、全問に答えることすら難しい。エッセイ教室の初日にこのような導入があったら、私だったらすぐに脱落してしまいそうです。
しかし、少し日を置いて、もう一度このコピーを見てみたところ、こんなふうにきっちり仕分けしてはいないけれど、心の中ではこのようなことを自分と対話しながら、エッセイを書く内容を考えているような気がしました。
自分との対話と6つの問いとを対応させてみると、
1)これまでに体験したことのうち、特に強く心に残っていることは何ですか?
何を書こうと思った時に、まず、これまでのことで、何か心に残っている場面や体験がないか、過去を振り返ります。
2)それは、いつ、どんな時のことですか?
これというものを見つけたら、それについて、もう少しはっきり思い出します。いつのことだったか、どのような成り行きだったのか。
3)そのことが、特に心に残っているのは、なぜですか?
その場面が思い出されたのは、どうしてか。何か、心に強く残っているはずと思い、その過去について、もう少し、考えを深めます。
4)~6)そのことを振り返ってみて、新しく気づいたことは何ですか? そのことに気づいたきっかけはどんなことですか? 自分にとってどんな意味を持っていますか?
すると、新しい気づきがあったり、新たに思い出したり、それが現在の自分に影響を及ぼしていることに気づいたりして、だからこそ、その思い出が心に残っていたのだと見えてきます。
などと考えていくと、この中学生の問題集の6つの問いは、エッセイを書くうえでの有効なガイドとなりそうです。ただ、4)~6)に関しては、分けて考えるのは難しそうで、一つの括りとして捉えたら、そのほうが考えやすいような気がしました。
私は、エッセイ教室に新しく入った方には、エッセイはどうやって書くのか考えずに、まずは何篇か書いてみてくださいと伝えます。そして、毎回の合評で、作品について意見や感想をもらい、ほかの方の書いた作品に触れると、このように書けばいいのかというものが、自分なりに見えてくるのです。それは大人だからできることなのでしょうか。
中学生には、合評などという時間的な余裕はないので、具体的に書き方の流れを教えないと、エッセイの書き方は伝わらないのかもしれませんね。ただし、自由に書く楽しさを損なうことなく、エッセイというものを教えてもらえるといいなと思いました。