ドラマも原作本も

 10ヵ月待って、図書館に予約していた本が届いた。横山秀夫著『ノースライト』。昨年2020年暮れにNHKのドラマを見て原作に興味を持ち、図書館で探すと、250人以上の予約待ちだった。放映よりも2年近く前に出版された本だから、ドラマで人気が再燃したのだろう。
 厚さ3センチの本を読み始める。主人公は青瀬稔という40代の建築士。客の依頼を受けて、信濃追分に一軒家を設計建築する。木の温もりのある家。北からの陽光、ノースライトが降り注ぐようにデザインした。依頼人はその家に満足したはずなのに、移り住んだ形跡がなく、連絡もつかない。青瀬がその謎を解く中で、登場人物それぞれの家族が描かれる。
 無駄を削いだテンポのよい文章。描写は緻密で圧倒される。主人公の生い立ちや、その家に唯一置かれていた椅子の由来など、文章からの情報は、映像から受ける印象とは違い、新鮮味がある。時間も忘れて読みふける。
 描写に感心する一方で、「ノースライトを取り入れた家」がどういう家なのかを、言葉からイメージすることの限界も感じていた。そこは、ドラマで先に映像を見ることができてよかったと思う。また、青瀬を演じた西島秀俊が、本の中でも青瀬として登場する。原作が先か映像が先かでいつも迷うポイントだが、好きな俳優なので、それはそれで楽しかった。
 こうして場面はいろいろ浮かぶのに、謎解きの最後の部分がさっぱり思い出せない。なぜ、依頼人がその家に住んでいないのか。青瀬に建築を依頼した理由は? 結末がわからない私は、初めて本を手にした読者のようにストーリーを追っていく。
 最後の最後の直前になって、謎解きの答えを思い出した。途中にその伏線となるエピソードが出てきたのに、気づかず素通りしていた。自分の記憶力低下にがっかり。とはいえ、そのおかげで今回は、ドラマを見てからでも原作を十二分に楽しむことができた。