選手村ボランティア(4)

ボランティアと新型コロナウイルス

 私がボランティアの活動を始めたのは、2回のワクチン接種を終え、その効果が出ると言われる2週間がたってからだ。しかし、実際に現場に行ってみると、その効果を待たない時期からすでに活動している人が多かった。
 周囲の人から心配されなかったのだろうか。質問すると、いろいろな答えが返ってきた。
「家族は心配してるわ。だから十分気をつけているつもり」
「仕事もしているし。ボランティアだからリスクが高いとうわけではないから」
「ボランティアをしていることを家族以外にはあまり言ってない。オリンピックからコロナが広がるんじゃないかって怖がっている人が多いから」
「家が遠いので、期間中は親戚の家に泊めさせてもらう予定だったけど、選手村で陽性者が出たら、泊められないって。でもこのボランティアは絶対にやりたいから、始発に乗って通って来てるの。今朝も」
 それぞれに事情や考えがある。それでも、みな10日くらいは活動する。パラリンピックも続けてやるという人も多い。私のように、感染リスクを考えて4日だけに縮小した人はいなかった。
 ボランティアは活動中に4日に1回PCR検査を受けることになっている。選手に近い場所で活動する場合は、毎回検査を受ける。結果は翌日、陽性者にのみスマホに送られてくる。
 このルールにより、私はPCR検査をほとんど毎回のように受けた。このように検査してもらえれば安心だ。翌日連絡が届いたらどうしようと、ドキドキするとしても。大会関係者の陽性者数は毎日ニュースになるが、広く検査した上での結果なのだから、過剰に反応することはないと感じた。それよりも、緊急事態宣言中なのに感染者がうなぎのぼりの東京の市中のほうが心配だった。
 私がボランティアをすることを知っている友人たちから、「結局、ボランティアはどうしたの? やってるの?」と心配するメールが届く。検査もちゃんとしてるから安心してねと返信した。
 ボランティアの活動内容には、感染対策の割合が大きい。誰かが触ったものはその後必ず除菌する。見回りの際には、手指用のアルコールが不足していないか、空気清浄機やファンが正常に動いているかなどの、コロナ禍でなければ不要な確認事項が並ぶ。部屋の中で密にならないよう、人数をカウントし、入室者を確認する。感染対策のために、ボランティアの仕事内容は何度も練り直しを余儀なくされたのではないだろうか。
 とはいえ、対策がしっかりなされていれば、選手も安心してリラックスして選手村で暮らせるだろう。コロナ禍ではそれが「おもてなし」に繋がるのではないか。選手村でのボランティアには、居住する人たちの快適な生活をサポートするという重要な役割が課せられている。

*東京2020オリンピック競技大会の公式ウェブサイトによれば(8月12日)、7月1日から8月12日までに、大会関係者の感染は533人、70万回に近い検査が行われた。

選手村ボランティア(5)ボランティアのお仕事 その2に続きます。