書くために読むエッセイ―48の作品が教える実践講座―
エッセイの書き方については、いろいろな本が出版されていますが、その中から、『書くために読むエッセイ ―48の作品が教える実践講座―』(文芸社 木村治美編 2002年5月15日発行)を紹介します。
副題にあるとおり、本書には48編のエッセイが収められており、それらの作品を例に、エッセイの書き方を解説しています。書きたい人にとって有益なアドバイスが詰まっていると同時に、エッセイを「読む」楽しみにも気づいてもらえる作りになっています。
エッセイを書いてみたいと思っている方は、まず一度通して読んでください。書き方をメモしながら読もうなどと気負う必要はありません。まずは読んでみて、エッセイを読むことの楽しさを知ってください。そして、自分も書けそうだな、書いてみたいと思われたら、ぜひ何編か書いてみてください。書いていくうちに、本に書いてあったことはこのことだったのかと気づかれることでしょう。こういう箇所に気を配ればいいのだと、合点がいくことでしょう。
すでにエッセイを書いたことのある方も、読む楽しさを再認識されるのではないでしょうか。自分を語るエッセイを読むことで、多くのひとの人生や感動を一緒に体験できるのですから。と同時に、書くときに気配りすべきポイントを再認識されることでしょう。こう書きなさい、という内容ではなく、どういう選択肢があるかを教えてくれるため、次作を書く際の大いなるヒントとなるはずです。
内容を少し覗いてみましょう。
第3章「文体や長さを決める」の「です・ます体で書く」には、2編のエッセイが載っています。一般的にエッセイでは、「である体」で書かれたものが圧倒的に多く見受けられます。本書においても、この2編を除いて、すべてが「である体」で書かれています。どういう時に「ですます体」を使うのか、使う際の注意事項は?という疑問について、章末の講評で解説します。
2編のエッセイを受けて、「ですます体」で書くことの効果として、 エッセイ1は「読み手に直接語りかけるよう」「あたかも映画の回シーンにかぶせられたナレーションのような響き」、エッセイ2は「相手に語り掛けるよう」「ソフトな印象」 などを挙げています。
また、「ですます体」の悩みである、語尾が「ました」「でした」と続き、語尾の変化が乏しくなりやすい点については、体言止めや不自然にならない程度に「である体」を絡める方法を、エッセイ1を例にして説明します。
第5章「時の経過を演出する」では、時間の処理について解説します。
時間の処理の仕方には、以下のような方法があります。
・出来事の起こった順番に書く
・サンドイッチ型(現在―過去―現在)で書く
・現在と過去が交錯する(現在を書く途中途中に、過去が顔を覗かせる)
・短い時間を切り取って書く
・一つのことについて長いスパンで書く
・統一テーマのなかでいろいろな時間を切り取って書くオムニバス方式
これらの方法について、それぞれの例となるエッセイを掲載し、座談会形式で解説しています。
[目次]より
第1章 エッセイとは何でしょう
第2章 テーマいろいろ-情景描写/紀行文/家族/社会問題/なまもの/本・映画・芝居/情報
第3章 文体や長さを決める-です・ます体で書く/会話の効用/適切な長さ
第4章 自分を語る
第5章 時の経過を演出する-順序よく/サンドイッチ型/現在と過去の交錯/短い時間/長い時間/オムニバス形式
第6章 書き出しと書き終わりは大切-書き出し/書き終わり
第7章 タイトルをつける
編者はエッセイストの草分け的存在、木村治美さん。そのグループの一員として本書の編集に携わりましたので、充実した内容については保証します。 現在は書店での販売がありませんので、図書館もしくは中古書店でお探しください。