一読しただけで伝わるエッセイを書くために気をつけたいことを以下にまとめました。気になるところからお読みください。

 2-1 文章として読みやすいか
 2-2 視覚的な読みやすさ
 2-3 時間の処理
 2-4 構成
 2-5 情報の取捨選択
 2-6 具体性
 2-7 エッセイの長さ
 2-8 登場人物の整理

2-1 文章として読みやすいか
これはエッセイ以前の話ともいえます。 読みやすい文章を書くには、「読みにくい文」を知ることで、その方法が見えてきそうです。
≪読みにくい文とは≫ 
・長い文
1つの文が3行も4行にもわたる場合、前半と後半で主語が変わってしまうことが多く、意味が取りにくくなる。また、読み手は句点で区切られた文をひと塊として捉えるため、長い文の意味をさっと把握するのは難しい。
・読点が少ない、もしくは多すぎる
読点がないと意味が誤って伝わる恐れのある場合は、必ずそこに読点を打たなくてはならない。
しかし、それ以外の読点が多すぎると意味が途切れ途切れになり、少なすぎるとどこまでがひと区切りなのかを読み取れず、文の意味を理解するのが難しくなる。
・段落が少ない
1つの文を塊として捉えるのと同様、1つの段落もまた1つの塊として読者は捉えるため、時・場 所・エピソードなどが変わっても同じ段落のまま続けて書かれていると、場面を捉えにくい。

2-2 視覚的な読みやすさ
文章として完璧であっても、見た目によって、その読みやすさは左右されます。読み手の立場に立つと、視覚的な要素も必要であると気がつきます。
・段落
段落が少ないことは、視覚的な読みにくさにも通ずる。改行がなく1つの段落がずうっと続くと、つまり紙面全体が文字で埋まっていると、見ただけで読むのがいやになってしまう。小説で、あえてこのような書き方をしたものはあるが、一般的には避けたほうがよい。
・セリフ
ところどころに「   」に入ったセリフがあると、紙面に余白が生まれる。読み手は視覚的に読みやすい印象を受ける。
・文字のバランス
漢字とひらがなのバランスも大切で、漢字が多いと全体が黒く見え、圧迫感を覚える。書かれている内容が重要なのであって、見た目は関係ないと思われるかもしれないが、ぎっしり詰まった黒々した原稿は、内容によほどの魅力がなければ、途中でもしくは最初から読まれない可能性は高い。
逆に、ひらがなが多すぎても読みにくいことも覚えておきたい。

2-3 時間の処理
最近の出来事から昔のことを思い出す、途中でさらに過去のことが出てくる、など、エッセイの内容には、いろいろな場面が登場します。どういう順番で書けば、読者はわかりやすいのか。書く側には工夫が求められます。
時間の処理の方法としては以下のものがありますので、書く内容に合わせて選んでください。
・物事が起こった順番に書く
いろいろ考える必要がなく、一番自然でらくな書き方ともいえる。しかし、順序良く書いたのでは、山場を効果的な場所にもってこられなくなる場合もある。
・サンドイッチ型(現在―過去―現在)で書く
現在から書き始め、過去に遡って思い出を書き、また現在に戻って終わる。現在という「パン」で過去という「具」を挟むという意味で、サンドイッチ型と呼ぶ。現在と過去の間に、一行あけることも多い。何かのきっかけで過去を思い出したとき、この型を使うと書きやすい。
・現在と過去が交錯する
現在のことを書きながら、心に浮かんだ過去の話を織り交ぜていく。人間の心は得てしてこのように現在と過去が行ったり来たりしているものなので書きやすいが、気をつけないと、読み手が現在と過去を混同してわかりにくいものになる。
・短い時間を切り取って書く
たった5分間のことでも、エッセイになる。あれこれ手を広げず、ある場面を切り取るという書き方も、読者を引き付ける要素をたくさん含んでいる。
・1つのことについて長いスパンで書く
何十年もの長きにわたって起きたことを1つの作品に書く場合もある。1つのことにこだわり、思いの深さが書き込まれることになる。

2-4 構成
しばしば、文章は起承転結で書くとよいと言われますが、エッセイはその意味では自由です。「転」ともいうべき出来事から書き始めることも可能ですし、結びの部分から書くこともできます。 ヒントを小出しにして引っ張ってもいいでしょう。どうであれ、書きたいことが読み手に効果的に伝わる構成を考えたいものです。
最後にいわゆる「まとめ」を長々と書くのは、エッセイとしてはあまりスマートとは言えません。まとめは書かずに余韻を残すような終わり方をして、読者の心の中にそのまとめの内容が浮かび上がるような書き方ができれば最高です。
ちなみに、起承転結はもともと漢詩の構成法の一つで、それが文章の組み立てとして広く応用されているようです。

2-5 情報の取捨選択
読者が自分のことを何も知らないと思うと、あれもこれも書いて説明したくなります。また、それとは逆に書き込みが足らず、読者が筆者のイメージが伝わらないこともあります。
何を書いて、何を書かないか。その取捨選択はたいへん難しいものです。「こうすればよい」という万能の方法はないので、毎回、どこまで書くか、書かないかを考えなくてはなりません。
同じ読み手に向けてシリーズ的に発表する場合は、筆者の年齢などプロフィール的な部分は割愛できますが、通常は、都度、自分の情報をある程度書き込む必要があります。

2-6 具体性
「美しかった」「おいしかった」「楽しかった」。このように言葉で説明するのはなるべく避けます。どのように美しいのか、どうおいしく感じたのか、何が楽しく感じさせたのか。具体的に、その状況を描写したいものです。読者がその美しさ・おいしさ・楽しさをイメージできるように。

2-7 エッセイの長さ
書く媒体や場面によって作品の長さが制限されることもあります。その場合は、その長さに見合った題材を取り上げなくてはなりません。
800字程度で書けるものを取り上げて、ただ膨らませて2000字にすると、それはテンポの悪い間延びした作品になってしまいます。
しかし、どこまで掘り下げるか、どこまで書き込むかで、同じ題材でも800字に仕上げることも、2000字に仕上げることもできます。

2-8 登場人物の整理
たとえば同窓会のことを書いたとしましょう。たくさんの人が作品に出てきますが、読者はその誰も知りません。Aさん、Bさん、Cさん……とたくさん登場しても、読者はイメージできません。登場人物の数をなるべく少なくするとが必要です。
登場人物の呼び名も気になります。Aさんとするか、佐藤さんとするか、実名は出せないから本当は佐藤さんだけど田中さんとするか、悩ましい問題です。アルファベットを使うと、実在の人物ではないように感じられますが、相手のプライバシーを考えてますよというアピールにはなります。また、身近な人を仮名で出すことに、書き手自身が違和感を覚える場合もあります。
作品に応じて、使い分けが必要となるでしょう。