「私」について書く

私が講師として携わっているエッセイ教室では、第1回目のエッセイを「私」というテーマで800字(原稿用紙2枚)で書いていただいています。自己紹介の意味もこめてお願いしているのですが、口頭で自己紹介するのと違い、書くとなると、自分のことの何を書こうか、どう書いたらいいのだろうと、最初から悩ませてしまっているようです。

エッセイを書いてみようという方は、書き慣れている経験者から小学校の作文以来という方までさまざまです。どういう文章経験があっても、「私」の何を書くかで悩むのは同じです。

自分の性格を書くなら、その性格をうまく表すエピソードがあると(思い出せると)いいですね。
「何年にどこで生まれた」から書き始める必要はありませんが、出生が人生に影響するのなら、生まれから書き始める場合もあるでしょう。
これまでの人生のなかでターニングポイントともいえる出来事。
それとは逆に、最近の自分の変化。
どれも「私」。何を最初のエッセイで書きたいでしょうか。

書き出しで悩んでしまったら、気を楽にして、途中の文章からでも、とりあえず書き始めるのも一つの方法です。パソコンであれば、頭に浮かんだことをいろいろ書いてみてから、つなげたり、削ったり、付け加えたりが簡単です。

はじめてエッセイを書いた方から、
「あれを書こうか、これを書こうか、決まるまでは大変だったけれど、書き出したらとても楽しかった
と言われことがあります。そう感じてもらえると、私もうれしくなります。

そういえば、私自身は「私」というテーマを渡されたことがありません。書いてくださいと人には頼むのに、自分が書いたことがないとは……と思いながら、以前書いたエッセイを読み返していたら、たくさんの「私」が出てきました。そうでした。エッセイは「私」を書くもの。「書き方のヒント」でもお伝えしたように、エッセイには「わたしの存在」が必要です。

以前に書いた「内股の女の子」を今月のエッセイに掲載しました。足元を切り口に、ある時を境に自分を変えたことを書きました。「私」というテーマの作品として成立しているでしょうか。