提出したら、観念しよう

エッセイ教室では、提出したエッセイをみんなで合評します。全員の手元に作品のコピーが配られ、まず、筆者本人が朗読します。その後、講師や参加者から感想や意見が出されます。筆者はそれらの意見を聞いて、その作品がどう受け止められたか、どこが伝わらなかったかなどを知り、後に推敲を加えたり、次のエッセイを書く際に役立てたりします。

時々、筆者自身が朗読を終えてすぐに、以下のような言葉を付け加えることがあります。
「実は、時間がなくて、ちゃんと見直ししないまま提出してしまいました」
「忙しくて、考える時間がないまま、とりあえず原稿用紙を埋めた感じです」
「テーマに沿った内容を思いつかなくて……不本意な出来ですが」
などなど。言い訳ともいえましょうか。

思わずそう言ってしまう気持ちはよくわかります。
たとえ書き上げた時点では完璧と思えたとしても、少し時間がたち、読者の前で朗読すると、少し第三者的に距離を置いて見直すことになるからでしょうか、がっかりすることがよくあります。なんでこんなふうに書いたんだろうと反省したり、ずいぶん説明が多い文章だと気づいたり、漢字の変換ミスを見つけたりします。
ましてや、エッセイ教室に毎月提出するというのは、よほど時間をうまく見つけない限り、たいへんなことです。時間がなくて、という事態がしばしば起こるのも当然です。

そうはいっても、自分の手元から離れて、他人の手に渡ってしまったら、もう観念するしかありません。「だって、忙しかったんだもん」と言うのは心の中だけにして、意見を受け止めるしかありません。
合評の途中で、多少余談に話が流れたら、言い訳をするチャンスもあるかもしれませんが、冒頭に、筆者が言い訳をすることは避けたいものです。

それから、もう一つ。特に、めずらしい景色や、みなが知らない物を説明するとき、写真を見てもらえれば一目瞭然なのにと思うことがあります。けれども、エッセイでは、それを言葉で表現することを目指しています。エッセイを読んでもらう前に写真を見せるのはやめましょう。エッセイを読んで、みなが文字からその景色や物をイメージしてからにしましょう、写真を見せるのは。
もともと、「写真に添えるエッセイ」として書くのならともかく、エッセイだけで勝負するときは、観念してエッセイだけを差し出しましょう。

まずはその作品だけを読んでもらうことが大切です。周辺情報のない状態で読んでもらって、意見を聞きましょう。
その後はご自由に。追加説明も写真も、時間あれば言い訳もどうぞ。そのおしゃべりのなかから、それを書き加えたらいいのに!と言えるエピソードやネタが見つかることもままあります