変化する言葉~オノマトペも時代によって変化する~

11月3日、朝の情報番組で、「電話を切る音」を取り上げていました。
話の発端は、小説家 吉川英梨さんのツイッターです。原稿に「電話がガチャンと切れてしまった」と書いたら、「ガチャン」は「スマホなのでプツンでは?」と校正の直しが入った、とツイートしたところ、話題になったそうです。
家の固定電話は、相手が切ったら、「ガチャン」と聞こえますが、スマホはたしかに「プツン」とか「プツ」です。

オノマトペも時代によって変化するのですね。電話の鳴る音として「リーン、リーン」が使われていたのはいつの話でしょう。現在は、スマホだけでなく、家の電話でもメロディが鳴る場合が多いので、何気なく「リーン、リーン」と書かないよう、気をつけなくてはいけません。現代の電子レンジは「チン」とは言いません。呼び鈴も「ピンポン」に限りません。いつの時代の話を書くかによって、オノマトペを書き分ける必要があるということですね。

ちなみにオノマトペとは、「擬音語」および「擬態語」をさします。
擬音語:物音や動物の声をまねて言葉とした語。「さらさら」「ざあざあ」「ワンワン」など
擬態語:事物の状態やようすを表した語。「にやにや」「ぴかぴか」「ゆったり」など
オノマトペを使った文章は、状況をイメージしやすく、また、臨場感が増すように感じます。ただし、使い過ぎや、まだ市民権を得ていない新しいオノマトペの使用は、十分気をつけたいところです。

電話の「ガチャン」は、擬音語です。それは、機器の変化によって、実際の音が変化して、それを表すオノマトペも変化しました。
擬態語はそれと違って、受け手の感覚による言葉なので、若い世代から新しい表現が生まれてくるようです。

文化庁は毎年、「国語に関する世論調査」を行っています。2012年の調査では、「きんきん」「さくさく」などのオノマトペを取り上げて調査していました。
きんきんに冷えたビール」という言い方を、
聞いたことがない人23.5%。聞いたことがあるが使ったことがない人41.3%、使ったことがある人34.3%。
「パソコンがさくさく動く」という言い方を、
聞いたことがない人59.8%、聞いたことがあるが使ったことはない人18.1%、使ったことがある人20.2%。
当時は、「きんきん」は多くの人に知られていたが、「さくさく」については、半分以上の人が、今一つイメージできなかったということです。その後、「さくさく」を聞いたことがある人はだいぶ増えて市民権を得ているのではないでしょうか。
いずれの言葉も、60歳以上の人は、使ったことがあると回答したなかで割合が一番低いという結果でした。若い人が新しい言葉を使い出し、徐々に上の世代に広がっていく。これは、オノマトペに関わらず、新しい言葉が生まれるときの傾向でしょう。

最近読んだエッセイのなかに「わらわら」という表現が使われていました。
「希望を募ると、わらわらと集まった」
これはどういう状況をいうのでしょうか。ネット上のデジタル大辞泉には「わらわら」の意味は「多くの人が群れ集まったり、群衆がばらばらと散っていったりするさま。動物についてもいう」とありました。私は、「わらわら」と聞くと、あちこちから湧き出てくるようなイメージを受けます。たとえば、「続々と」「次々に」「立て続けに」という表現のほうが、わかりやすいようにも感じます。

新しいオノマトペは、多くの人の間で共通の認識にならないと、せっかく使ったのに修飾語としての役割を果たせないということになりそうです。

*「国語に関する世論調査」については、こちらの今月の話題もご覧ください。