小冊子をつくる楽しさ

前回は、1つの題材で何編かのエッセイを綴る、「シリーズで書く」という書き方について触れました。このようにして書いた作品を誰かに読んでもらう場合、「小冊子」という形にして渡す方法があります。今回は、手軽につくれる小冊子の魅力について紹介します。

エッセイ教室やグループで、定期的に冊子を発行する際は、人数や作品数の関係上、印刷および製本を印刷会社に依頼することが多いでしょう。
それに比べて、個人で書いたシリーズものを小冊子にまとめる時には、ページ数が少ないので、自宅のプリンタで印刷し、真ん中をホチキス留めするという方法で、簡単にそして安くつくることができます。また、周囲の仲間や知人に配る程度で、部数も多くなければ、それこそ自宅で完成させるので十分です。渡し忘れた人がいれば、1部だけつくるのも容易。カッコよく言えば、オンデマンド印刷です。

さらにお伝えしたいのは、自分1人で小冊子をつくる楽しさです。エッセイを推敲し、掲載順を考え、レイアウトを考え、目次をつくる。レイアウトが変わると、また文章を直したくなります。表紙やタイトルを考える。挿絵を入れたければ、フリー素材のイラストから探す。フォントを変えてみると、見え方の違いに気づく。こんなことをやっていると、完成まで時間はかかりますが、エッセイを書き上げた時とはまた別の達成感があります。最初から何ページもあると大変ですので、まずは数編のエッセイで8ページくらいの小冊子をつくることをお勧めします。これが楽しいかどうかは、人によるかもしれませんが、ぜひ一度、試してみてください。

私が実際に、「選手村ボランティア」シリーズのエッセイを小冊子に仕上げましたので、その制作過程を順に書き出してみます。

1 掲載エッセイを確定する
ボランティアをした時のエッセイが7編、それ以前に書いた、ボランティア応募時や辞退しようかと悩むエッセイが3編を合わせて、全10編とする。

2 構成を考える
・以下の2章に分ける。最後に「あとがき」を加える。
 〇ボランティアへの道 
 〇選手村ボランティア
・写真を入れる。
 ユニフォームやピンバッジなどの写真を、最後の見開きページを使って小さく入れる。
奥付を入れる
 書籍の最後に付いている奥付(書名、発行者、印刷者、発行年月日など)は、個人的な小冊子では不要とも言えるが、発行年月は入れておきたい。

3 レイアウト
A4の紙に両面印刷し、真ん中で折ってホチキスでとめる「中綴じ」にするため、出来上がりはA5のサイズとなる。1ページに38字×19行と決め、作品のデータを入れてみると、全体で33ページになった。
中綴じは、ページ数が多すぎるとかさばって、うまく紙が折れないため、8枚に収まるよう(つまり32ページ以内)、文章の量を調節しながら、校正する。

4 同時進行で、表紙とタイトルを考える
小冊子の表紙の紙には色のついた紙を使用することが多いが、今回はなにかオリンピックらしい表紙の絵をと考え、エンブレムにヒントを得て、ワードで図形を挿入してデザイン、白い紙に印刷することにした。
タイトルは、もとは「選手村ボランティア」というシリーズタイトルだったが、少し変更して「選手村でボランティアをしました」に決定。

5 同時進行で、印刷用の紙を探す
写真を入れるので、あまり薄い紙の両面印刷だと、裏写りしてしまうため、少し厚めの白い紙を家電量販店のプリンタ用紙のコーナーで探した。

6 自宅で印刷そして製本
本文をA4の紙に両面印刷し、表紙も印刷して、真ん中で折り、ホチキス留めをして完成。ホチキスは中綴じ用のものが必要(600円ほど)。

さて、こうして書き出してみると、けっして簡単とは言えません。けっこうな時間を要しました。けれども、楽しいですよ。ぜひ、その楽しさを味わってみてください。

*ワードの設定については詳細を省きました。「中綴じ ワード」と検索すると、ワードの設定法が出てきますので、参考にしてください。