推敲の際に陥りやすい落とし穴
2020年10月、この1ヵ月は、しばらく会っていない知人にメールや手紙を送ることが重なりました。今の時期、冒頭の挨拶文では、やはりコロナに触れざるをえません。違う人に宛てるにしても、毎回同じ文言では芸がないので、少しずつ表現を変え、以下のような挨拶文を書きました。
「新型コロナウイルスで世界中が揺れていますが、お元気でお過ごしですか?」
「予期せぬことが起こり、私たちの生活は一変してしまいましたね」
「予想外のことが起きて、この1年は時が止まってしまったような印象です」
つい先日も、1年ほど会っていない友人に伝えたいことがあって、メールを送りました。書き出しはこうです。
「新型コロナウイルス感染という予想外のことが起きて、今年は何もしないまま終わってしまいそうな気配です」
すると、友人からこのような返事が戻ってきました。
「コロナに感染とのことでびっくりしました。もう大丈夫でしょうか? お見舞い申し上げます」
なんと、私がコロナに感染したことになっています。あわてて打ち消しのメールを送りました。
どうしてこのような誤解が生じてしまったのでしょうか。
「感染という予想外のこと」を、
私は「世の中にとって予想外のこと」と書いたつもりですが、
相手は「私にとって予想外のこと」と読んだのです。
何度も同じような挨拶文を書いているうちに、いつの間にか誤解を生じさせるような表現になっていたことに、私自身が気づいていませんでした。
同様のことは、エッセイを推敲する際にも起こりがちです。
何度も書き直しているうちに、いつの間にか大事な箇所が抜け落ちたり、曖昧に読める表現になったりして、合評で指摘されてはじめて気づく、ということがしばしば起こります。特に推敲を重ね、文章を練りに練った際に陥りやすい落とし穴ですので、気をつけたいものです。
そうわかっていながら、自分で掘った穴にドーンと落ちてしまいました。すぐに相手にメールして、誤解を与えた書き方を誤り、「私は元気です!」と伝えました。相手からも「お元気でよかったです」と返事が届き、ほっとしました。