情報エッセイを読む楽しさ

「エッセイ教室で毎月読む作品は、はじめて知る話が多くて、おもしろいですね。『エッセイの書き方を習う教室』と思って入りましたが、読む楽しさもあるのですね」
数ヵ月前にエッセイ教室に入会した方の言葉です。

教室では、互いの作品を読み合って合評を行います。意見や感想を述べ合い、自分が書く際に注意すべきポイントを学びます。ところが、他の作品を読むこと自体が楽しくて、読むだけで満足することもあります。
教室に提出されるエッセイの題材は多岐にわたります。身の回りの出来事、懐かしい思い出話、旅行、家族、その他なんでも題材になります。その中でも、新しい情報や知らなかった知識を教えてくれるエッセイは、知る喜びを伴い、特別の楽しさがあります。

この「新しい情報や知らなかった知識を教えてくれるエッセイ」を「情報エッセイ」と呼んでいます。最近目にした作品から、情報エッセイの例をあげてみると、
海外での民泊の体験、地方の風習、方言の分析、写真展開催までの経緯、話題映画の紹介、交通事故の顛末などなど。
自分には体験できないことを、他の人が体験して、教えてくれるのです。自分には興味がないと思っていたことを、他の人の目を通して、おもしろさを伝えてくれるのです。
エッセイ教室に入ったばかりの方が、こうした「読む楽しさ」に気づいてくれて、私はうれしくなりました。

とはいえ、情報そのものは興味深いのに、読んでいて引き込まれない作品もあります。それは、以下の場合に起こるように感じます。
作品から書き手が見えてこない時
書き手が実際に体験し、どう感じて、なぜそう感じて、その結果どうなったのか。それを語る書き手が作品の中に存在するからこそ、生きた情報となり、読み手は思わず作品に引き込まれるのだと思います。これは、エッセイ全般に言えることで、「私」の存在しない作品には物足りなさを感じてしまいます。
情報がうやむやな時
扱う情報について、書き手自身がよくわからないまま書いていると、読み手にはなかなか伝わりません。その場合は、掘り下げて調べてみる、「○○についてはわからないが」と明記するなどして、読み手が戸惑わないようにしたいものです。また、金額・大きさ・日時などの数字を書き入れると、情報に説得力が加わることもあります。労を惜しまずに調べて、読み手を引きつける情報エッセイに仕上げたいですね。

情報エッセイについては、「情報と情報エッセイ」の記事もぜひ併せてお読みください。