継続は力なり〈毎月エッセイを書くということ〉

エッセイ教室のあとのお茶の席で、次のような発言がありました。
「毎月2000字の作品を書いてきたというのは、自分の自信にも力にもなっていると思う」
教室に通うほかの人たちもうなずきながら、会話が続きました。
「私も、このくらいの長さの文章は書けると、自信を持って言えます。もちろん、書くときはいつも四苦八苦していますが」
「継続ってすごいことですね」

私が講師として関わっているエッセイ教室では、作品の長さを2000字(400字×5枚)以内でお願いしています。
毎月1回、決まった長さの作品を書くということは、いつの間にか力になっている。 数年通っている人たちは、自身の体験から、そのことをはっきりと認識していました。

私も同様に2000字という制限のなかで、20年以上エッセイを書いてきました。そうすると、この題材なら2000字書けそうとか、このエピソードでは1200字くらいかなとか、おおよその分量がわかってくるのです。
2000字書くには、それなりの大きな題材が必要です。登場人物が複数であるとか、場所を移動するとか、心情の変化があるとか、掘り下げられる材料が必要だと思います。その大きな題材をたとえば800字に押し込めようとすると、あらすじ的になり、読み手に伝わらない箇所が多く、合評でさまざまな質問が出て、もっと多い字数で書かないと伝わらないのだと知ります。
それとは逆に、小さなエピソードを2000字にしようとすると、冗長になり、また水増し的な話も盛り込まざるをえず、間延びした作品になりかねません。

エッセイを書き始めた頃は、合評でそういう意見をもらってはじめて、その題材に長さが合わないことに気づくことが多いのです。ところが、何年も書いていくうちに、2000字の書き方がいつの間にか身に付いてきます。
と同時に、2000字の長さの文章なら書ける、という自信もまた身に付きます。
そうなるまでに何年必要なのかは、人によるでしょうが、教室で見ていると、2年在籍するとだいぶ長さと内容のバランスが取れてくるように感じます(あくまでも私個人の感想ですが)。

冒頭の発言には続きがありました。
「2000字を書き続けた力は、文章を見せた相手にも伝わっているようでした」
相手とは出版社。ドラフトを見せて、本にする道が開けたそうです。2000字を書き続けて蓄えてきた力が、近いうちに目に見える形となるようです。
まさに継続は力なりです。