テーマ「平成の思い出」800字で書く~私の場合~

「平成の思い出」というテーマで800字のエッセイを書くことになりました。平成を自分がどう生きてきたのか、顧みるいい機会です。けれども、31年間を800字に凝縮しなくてはなりません。皆さんならどういうエッセイを書きますか?

何を書くか。どう書くか。私がどのように題材を選び、作品を書き上げたか、その過程と結果をご紹介します。

1)題材を拾い出す
平成の時代に何が起きたか。いろいろ思い出し、アルバムを見て、メディアの「平成を振り返る特集」も参考にして、自分に関わりのある題材をランダムに拾い出してみた。
・パソコンや携帯電話(平成初期にはなかったのに、今や、それらのない状態は考えられない)
・病名の告知(いつの間にか、深刻な病気でも本人に告知するようになった。父に病名を伝えなかったことが未だに気になっている)
・自然災害(地震や豪雨など、大きな自然災害が多かった)
・子育て(平成のほとんどが子育て期間と重なる)
・エッセイ(平成になってからエッセイを書き始めた)
・10大ニュース・流行った歌や本・人気ドラマ(何か思い出せないか、最後は必死になって、平成に起きたことを調べまくった)

2)拾い出した題材が、エッセイとして成り立つか
それらの題材をエッセイに仕立てることができるか。以下の条件をもとに題材をふるいにかけた。
・印象的なエピソードがあるか(エッセイとして成り立たせるためには、心に残る具体的なエピソードが必要だ)
・800字に収まる内容か(この短さでは、深く書き込むことはできない。エピソードを1つだけにするか。小さいエピソードをいくつか入れると全体に散漫になるリスクがあるので、切り口をはっきりさせたい)
・時間の処理をどうするか(ある1時点を取り上げるのか、平成という長い期間の変化を書くのか)
「何についてどのように書くか」という構想が決まるまでが、エッセイを書く際に一番時間がかかる。時間をかけなくてはいけない、とも言える。

3)実際にはこのようにして題材が決まった
上記の題材を1つずつふるいにかける中で、「エッセイ」について何かエピソードはないかと、今までに書いたエッセイのタイトルをパソコン上で見てみた。すると、「年齢とともに変化する自分自身」について、折に触れて書いていたことが思い出された。
「老い」という言葉を使う年齢ではないが、それを考えさせる体の状態に遭遇し、もう若くはないことを自覚したり、いやもう少し頑張ってみようと思い直したりと、心が揺れた。それらのエッセイはエピソードとして利用できるし、エッセイの合評時のようすも使えそうだ。これらの小さなエピソードをつなげて 、平成という長い間の自分の変化を描き出せないだろうか。軽い内容だから、くすっと笑ってもらえるように仕上げたい。
こうして、道筋は見えてきた。

4)仕上げ
ここまで来ると、あとは書くだけだ。
それでも、800字に収めるために、何度も書き直した。3行に渡っていたセリフを2行に縮めたり、形容詞や言い方を変えて1行減らしたり、逆に増やしたり。パソコンは、修正が800字に収まるかが瞬時にわかるので、本当にありがたい。
タイトルは最後の最後まで決まらなかった。
「まだあきらめない」「いつの間にか」「少しずつ変わっていく」などと、おもしろみのないタイトルしか思いつかず、時間切れの1分前にひらめいた。

仕上がった作品は「今月のエッセイ」に掲載しましたので、タイトル共々ご覧ください。

なお、このエッセイについて気になっている点が2つあります。
・私の思いは男性に通じるだろうか。特に冒頭の段落。
・エッセイを書いているという前提の書き方なので、内向けの作品である。何も知らない人に読んでもらうには、「趣味でエッセイを書いている」という注釈的な1文が必要だろうか。
多くの方にわかってもらえる作品を書くには、あらゆることに気を配らなくてはなりません。いつも感じる難しさです。