悪口は書きたくない(その2)
以前、今月の話題に「悪口は書きたくない」という話を書いたことがあります。
Aさんはエッセイを書く際に、あることに悩んでいました。母親が「東京のうどんはまずい」と言った場面を書きたかったが、「まずい」と書くと、東京のうどんの悪口になってしまう。悪口は書きたくない。その場合、どのように書いたらいいのか。
Aさんの悩みの解決法について、教室ではこういう意見が出ました。
「自分では悪口と思っていても、読み手はそうは感じないかもしれない。あえて、そのまま書いてみて、教室のみんなに感じ方を尋ねてみるという方法もあると思いますよ」
今回、私は「病院選び」というエッセイを書きました。そのとき、まさに同じことを悩みました。内容は、足をケガして、どこの整形外科に行こうかと迷う話です。そのなかで、ある病院についてはあまり良くない評判を耳にし、そこを選ばなくてよかったと思うくだりがあります。良くない評判の内容を書くと、その病院に対しての悪口になるのではないか、そういうことをエッセイに書いていいのか、読み手の読後感はどうだろうかなどと、ずいぶんためらいました。
しかし、その良くない評判を具体的に書かないと、エッセイとしては骨抜きになってしまい、書き手の気持ちは読み手に伝わらず、エッセイ自体のおもしろさも消えてしまうように感じました。
というわけで、このくらいの書き方なら許されるのではないかという私なりの判断をして書き、エッセイの勉強会の場で感じ方を尋ねてみました。
・周囲の人に病院の評判を聞いて選ぶということは、よくやることで、このままでいいと思う。
・特に、悪口を書いているようには感じなかった。
・書き手としてどうしても気になるのなら、どこか違う場所の出来事として書くとかして、病院が特定されない工夫をすればいいのではないか。
このような感想がありました。
さて、このエッセイ工房の読者はどう感じてくださるでしょうか。
今月のエッセイに「病院選び」を載せましたので、ぜひ読んでみてください。