絵とエッセイの共通点

エッセイ教室に通うAさんがこんな話をしてくれました。趣味の絵画教室でのことだそうです。
「絵の先生から、作品のタイトルを最初につけないから、絵がまとまらないのだと言われました。あれもこれも描き込んでしまうのは、そのせいだと言うんです。そういえば、私のエッセイも、ついあれこれ書き込んでしまって、まとまらなくなる。絵と同じだなと思いました」

Aさんの言うとおり、絵の先生の言葉はエッセイに通ずるところがありそうです。エッセイの場合は、「タイトル」を「何を書きたいのか」に変換するとわかりやすくなります。
最初に何を書きたいのかをはっきりさせないと、余分なことまで書き込んでしまい、その結果、読者に伝えたいことが伝わらない作品になりがちである

エッセイの合評において、
・この部分は、大筋とはあまり関係ないので削ったらどうでしょうか
・○○については簡潔な説明で十分なので、半分は削りましょう
などという意見がしばしば出ます。余分なことが書き込まれている作品が多いということです。「削りましょう」と意見が出る箇所は、伝えたいことにたどり着く道筋から脱線していることが多いと感じます。

書く前に、自分が何を伝えたいのか(書きたいのか)をはっきりさせ、それに向かって進むことが大切です。もし書きたいエピソードがあっても、それは何を伝えるためなのかを考えましょう。
立派な着地点である必要はありません。単純に「聞いて聞いて、おもしろいでしょという気持ちを伝えたい」というのでもいいのです。その気持ちを伝えるために、エピソードをどう伝えるか、どこまで書き込むか、考えながら書いていく。ただ何となく書くのではなく。それが、余分なことを書かない秘訣だと思います。

そうやって考えて書いても、それが余分とは気づかない、という場合もあります。「これを書いておかないと読者がわからないのではないか」「自分がどう考えたかを説明したほうがいいと思って……」という書き手の思いが必要か否かは、合評で読み手の意見を聞いてはじめて気づきます。合評してもらう理由はそこにあります。ぜひ利用してください。

エッセイのタイトル
エッセイの場合、タイトル(題)は最後に決める人が多いようです。執筆中は仮のタイトルを付けておき、書き上げたときに、その作品の内容に合うタイトルを考え直します。タイトルは以下のようなポイントを頭に置きながら考えます。なかなかコレというタイトルを思いつかないのが現実です・・。
・内容を総括するもの
・読み手の興味をそそるもの 
・内容がバレない程度に内容をチラリとほのめかす 
・作品のキーワードとなる言葉
・最後の文と呼応させる などなど

書く前にタイトルを決めたときの失敗談をお聞きください。
それは、私がはじめてエッセイを書いたときのことです。アメリカ生活を終えて帰国したときの気持ちを書こうと思い立ち、大好きだったハロウィーンが日本にはない、その寂しさを書こうと思ったとき、「I miss Halloween」というタイトルが頭に浮かびました。なんだかカッコいいタイトルを考えついたぞ!と嬉しくなりました。さらに、「このタイトルこそ、私の気持ちを表している」と思い込んでしまったため、そのタイトルを説明しなくてはならないと思い込み、ハロウィーンを説明し、「miss」という英語の意味も説明しました。その結果、説明だらけの、私の気持ちは読み手にまったく届かない文章になってしまいました。
というわけで、書く前にタイトルを決めてもいいですが、それにこだわり過ぎないよう、柔軟な気持ちでエッセイを書いてくださいね。