エッセイと写真

本の紹介記事に、4冊のエッセイが載っていました。著者はすべて女性で、それぞれ翻訳者・詩人・新聞記者・写真家。各分野で活躍している人の話がおもしろくないわけがありません。今度読んでみようと思いながら、その紹介記事の最後まできたとき、「その4冊は皆、著者が撮った写真も載っているエッセイ集である」というくだりが目に入りました。

そこに私は引っ掛かりました。紹介記事からはどのような写真が載っているのかはわかりませんが、エッセイを書いていて、写真を見せることができればどんなに楽か……と思うことがあります。それは、風景描写や情景描写を書いているときです。どんなにていねいに詳細に描いても、情景を文章で伝えるのはとてもむずかしいからです。

特に旅のエッセイにおいては、文章の限界を感じます。ある街の情景が詳しく描写されていても、行ったことのない読み手には今一つイメージできず、逆に行ったことのある読み手にとっては物足りないことが多いものです。読み終わったあとで、これが今回のエッセイに書いた街ですと、写真を見せてもらうことがあります。一目瞭然。ぼんやりイメージしていた街がはっきり見えてきます。もしくは、イメージとはまったく違う街並みが写っていることもあります。どんなに言葉を駆使して表現しても、やはり写真にはかなわない。そう感じることがたびたびあるのです。

では、情景描写はどのように書いたらいいのでしょう。情景そのものに加えて、別の角度からの描写が必要と思います。
その情景をどう感じたか。どういう感動があったのか。なぜそこに魅力を感じたのか。何気なく見ていて引き込まれたのなら、その心の動き。こうした自分の思いの描写が書き込まれた作品は、読み手の共感を得ることが多いようです。

冒頭の紹介記事に話を戻します。
4冊とも写真付きだったのは、たまたまなのでしょうか。もしかしたら、世の中の流れが、エッセイに写真を組み合わせる傾向にあるのかもしれません。
最近はスマホで簡単に撮影でき、写真がとても身近な存在になりました。特別な場面だけでなく、散歩中に目についた景色や花を撮ることもありますし、メモ代わりや記録代わりに使うこともあります。
これまでは、写真でエッセイを補うのは邪道ではないかという思いがありましたが、身近な話題を取り上げるエッセイに、その場面を切り取る写真が登場してもいいのかなと考えが変わってきました。文章の腕を磨きたい気持ちは変わりませんが、エッセイと写真のコラボもまた楽しいのではないかとも思うのです。これには、もちろん賛否両論があるでしょう。

現在出版されているエッセイ集も、気づかぬうちに写真入りが主流になっているかもしれないと、本屋のエッセイ本コーナーをチェックしてきました。文章だけのエッセイ集がまだまだ主流、9割が文章だけの本でした(私の個人的な調査結果です)。と同時に、写真入りやマンガ的なイラスト入り、文字に大小や太文字の変化をつけたもの、などの文字だけではない本が目立つように置かれていました。

エッセイは「気のむくままに、形式にとらわれず、自由に書いた文章」です。写真付きでも、俳句を途中に入れても、イラスト入りも、マンガエッセイでも、その人らしく自由に楽しく書いていいと思います。自分の気持ちを文章で伝える、というその基本は忘れたくありませんが。