シリーズで書く
今月のエッセイに、オリンピックのボランティアの体験記を載せました。「選手村ボランティア」というタイトルで、(1)から(最終回)まで7回に分けて書きました。それぞれ、400字換算で4~6枚の長さです。
ボランティアはたった5日間の活動でしたが、初日の経験だけでも、いろいろなテーマでエッセイが書けそうなほど、中身の濃い時間でした。これは絶対にエッセイに残しておきたいと思いましたが、2000字程度の1編にさらっとまとめられるような内容ではありません。どのようなエッセイに仕上げたいのか、まずは自分の思いを書き出してみました。
・ボランティアの仕事の説明をきちんと書き入れたい
・と同時に、私自身がどう感じたか、何を得たかもしっかり書き込みたい
・楽しい出来事もたくさんあったので、それは絶対に書いておきたい
・コロナ禍で行われたオリンピック、という時代性も残しておきたい
そして、これらの自分の思いを読み手にわかりやすく伝えるには、シリーズで書くのがいいのではないかと考えました。印象に残ったことや書き残しておきたいことを、それぞれの切り口で1編ずつ書いていき、それらを合わせれば、最終的に作品「選手村ボランティア」が仕上がる、という書き方です。初日の印象はたいへん強かったので、それは独立させて書こう、最終日にもなにか感じることがあるのではないかと考え、以下の5つの切り口でエッセイを書いていくことにしました。
1)初日のこと
2)仕事について
3)楽しかったこと
4)新型コロナウイルスについて
5)最終日のこと
もし途中で考えが変われば、この切り口を変えてもいいと思っていました。結果的には、変更はなく、5つの切り口でエッセイを7編書き(「仕事」と「楽しかったこと」が2編ずつ)、「選手村ボランティア」というシリーズ作品が完成しました。
内容が多い(濃い)出来事の場合、またある程度の期間にわたる事象を扱う場合、このようにシリーズで書く方法は書きやすいと思います(「続きもので書く」という言い方もします)。
たとえば、旅行・趣味のこと・介護記録など、どこから始めるか、何を書いたらいいか悩んだときは、心に残ったエピソードや忘れられない場面など、書きやすいところから始めて、エッセイを仕上げていきます。何編かエッセイが揃えば、いつの間にか全体を網羅するシリーズ作品ができあがる、というわけです。
書き続けていたら、図らずもシリーズものになっていた、ということもありそうです。親のことを折に触れて書いていたら、「両親の思い出」としてまとめるだけの作品がたまっていた。そんなこともあるでしょう。
こう考えると、自分史は究極のシリーズものではないでしょうか。自分が生きてきた中で起きたさまざまなことを綴ったエッセイ。その集大成は、「自分史を書く」という形から入るより、等身大の自分に近い自分史であるような気がします。