気になる言葉(6)イチゴの旬

あるエッセイに「私はイチゴが大好き。旬のものはビタミンCもいっぱいだ」というくだりがありました。おいしそうなイチゴの話でしたが、一つ気になったのは、それが2月の話だったということです。
たしかに、店頭には12月初旬から5月頃までイチゴが並んでいます。でも、イチゴの旬は2月でしたっけ? 気になって調べてみました。

まず、「旬」の意味から調べました。
魚介・野菜・果物などがよくとれて味の最もよい時」(広辞苑第七版)
どの辞書を見ても、同様の説明です。

イチゴの旬について、図書館で探したところ、このような本に出合いました。『旬ってなに? 季節の食べもの(春・夏・秋・冬の全4巻)』(本多京子監修 汐文社 2018年12月/2019年3月発行)
さまざまな野菜・果物・魚介の特徴や出回る時期などを、写真とともに説明する児童書です。「春の巻」にイチゴは載っていて、「なぜ、イチゴの旬が変わったの!?」というタイトルのコラムに詳しく書かれていました。要約すると、
・本来の旬は3月~5月。
・1960年までは露地栽培が中心だったが、その後、ハウス栽培が多くなり収穫時期が早まった。
・冬のイチゴが高く売れるため、冬に出荷する農家が増えた。
・そのために、まるでイチゴの旬が冬に移ったかのようになった。

旬は「よくとれる時期」のことですから、イチゴの出荷数も調べてみました。
12月から増え始め、3月が一番多くなり、5月にはだいぶ減っています。つまり、店頭に多く並ぶのは3月前後ということです。また、インターネットで調べると、冬のほうが糖度が増して、甘くおいしく感じるという説明を見つけました。
現代のイチゴ狩りはハウスの中で行うため、1月から5月まで、いつでも楽しめるそうです。

となると、イチゴの旬は「冬」と思う人がいても不思議ではありませんし、現代のイチゴ事情から考えると、イチゴの旬は「冬から初春」と言っても、間違いではないのかもしれません。
冒頭で気になったエッセイについては、私なら「旬」という言葉を使わずに、「最近は、2月でもおいしそうなイチゴがたくさん出回っている」と書こうと思います。とはいえ、本来の旬が3~5月ということは、知識として頭に入れておきたいものですね。

今回、旬について調べる中で、「初物」や「はしり」という言葉については知っていましたが、旬の終わり頃に出回るものを「なごり」と言うことをはじめてしりました。日本料理では、なごりの時期の食材の状態に合わせて調理し、季節が終わるのをなごり惜しみ、次の季節を楽しみにするそうです。
また、俳句では、イチゴは夏の季語だそうです。
食べものの旬と日本の文化には、深い関わりがあるようです。