エッセイは読むのも楽しい

エッセイ教室に入会希望の問い合わせがあると、まず見学をしてもらい、それから入会するかどうかを決めてもらいます。2時間の講座で何をするかを実際に見て、講師や仲間となる人々のようすも知ってからのほうが、入会後の失望は少ないでしょう。ですから、もちろん見学だけで終わってしまう人もいます。

先日、ある女性が見学に来ました。教室は、合評形式で進みます。エッセイを書いた本人が朗読した後、他の人が意見や感想を述べます。見学者は終始楽しそうな表情でした。「うんうん」「そうそう」「そのとおり」とでも言いたいようすでうなずき、メモも取りながら、聞いていました。これほど熱心な見学者ははじめてだったので、私も気になって、ちらちらと表情を見てしまったほどです。

教室の最後に、感想を伺ってみました。彼女は息を弾ませるようにして、こう言いました。
「エッセイを書いてみたいと思って、この教室を見学させてもらったのですが、エッセイって、読むのも楽しいんですね!」
私はうれしくなりました。エッセイの読む楽しさを感じ取ってくれたとは!

エッセイを読むと、自分には経験できないこと、考えもしなかったことにも出合えます。 感動を共有し、多くの新しい情報にも接します。それだけでなく、心の中まで覗かせてもらえます。自分以外の人生に触れることができるのです。
こうした読む楽しさを、私自身がはっきり感じるようになったのは、エッセイを習い始めて何年かたってからだったように記憶しています。ですから、この見学者が2時間で感じ取ったことに驚きもしました。

うれしくなったのには、もう一つ理由があります。その見学者が読む楽しさを感じたのは、教室の雰囲気がよかったからだと思うのです。教室で互いのエッセイをていねいに読み、感じたことを発言する際にも言葉を尽くして相手に伝える。教室が醸し出す空気が、きっと心地よかったのだと思います。こうした教室に育っていくことは、教室の皆さんによるものであって、講師の力ではありませんが、講師としては心からうれしく感じます。

この見学者はその場で入会を決め、次の教室から仲間としてエッセイを読むこと、そして書くことを楽しんでいます。