ぴったりの言葉を見つけたい

知人との会話のようすを書いたときのこと。

知人が少々突き放した言い方をしたので、そのセリフの後に、「と開き直った」と書いた。少し時間をおいて読み返してみると、「開き直る」がずいぶんキツイ表現だと感じた。これでは、知人が、それまでの態度を豹変させて毒づいた、そんなイメージになってしまう。実際はどうだったか? いや、知人の言い方は、そこまできつかったわけではない。表情も穏やかだった。となると、どう書けばよいだろう。

エッセイを書いていると、その時のようすを的確に表す言葉は何だろうと悩むことがある。けっこう、ある。

読者は書かれた言葉だけが頼り。その情報だけから、イメージを膨らませる。書き手としては、自分の感じたこと見たことをできるだけ正しく伝える表現を選びたいものだ。

さて、どのようにしたら「ぴったりの言葉」は見つかるだろうか。一つの方法をご紹介しよう。「開き直る」を例にとると・・・

1)まず、辞書を引いて、使おうとした言葉の本当の意味を知る。

「開き直る」は、広辞苑(岩波書店)には「急に態度を改めて、正面切ったきつい態度になる。のがれられぬと覚悟して、ふてぶてしい態度になる」と書かれていた。やはり、この言葉はしっくりこない。

(個人的には、紙の辞書は重くて使わなくなり、電子辞書に入っている広辞苑と明鏡国語辞典を使用、およびネット上の辞書も参照)

自分がイメージする意味と違うとなれば、

2)類語辞典を使って、似た意味をもつ他の言葉を探す。

日本語大シソーラス類語検索大辞典(大修館書店)によると、「開き直る」の類語として「居直る」「尻(けつ・しり)を捲る」が出てくる。「不貞腐れる」も参照とある。どれも、自分のいわんとする表現ではない。

(個人的には、電子辞書に入れた『日本語大シソーラス類語検索大辞典』を使用。もしくはネット上の類語辞典を活用)

これらも、自分が表現したいニュアンスとは違うとなれば、

3)ネット上の日本語シソーラス連想類語辞典で探す。

https://renso-ruigo.com/

この辞典の面白いところは、類語を枠を超えた、広い範囲の言葉がたくさん出てくるところ。まったく関係ないと思われる言葉もあるが、こういう言葉を探していた!と発見することもしばしば。

それでも、自分の思いにぴったりくる言葉が見つからなければ、

4)方向転換をする。

「開き直った」ではなく一般的な表現「と言った」に変更する。そのセリフ自体を書かない。など、違う方法を考える。

 

以前は、類語辞典を使うのは邪道と思っていた時期もありますが、今は違います。自分の脳の中にはあるけれど、引っ張り出せない場合は、何か道具を使って目の前に提示し、そのどれを使うかを自分の脳で考えればいい。読み手に自分の気持ちを正しく伝えることのほうが、よほど大切なのだ。今はそう思っています。