気になる言葉(8) ぁ

「うれしいな」「食べたいな」「そうですか?」
このような、小さい「ぁ」を使った書き方は、メールやSNSなどではよく見かけますが、最近は、エッセイでも使う人が増えてきました。小さな文字のことは「小書き」といいます。

「うれしいなぁ」を段階的に見ていくと、
1 「うれしいな」の最後の音「な」を伸ばしたい
2 「あ」を付けて、「うれしいなあ」と書く
3 その「あ」を小書きにする
という順に、「うれしいなぁ」ができあがります。
以前は、エッセイでは2まで、すなわち「うれしいなあ」と書き、「あ」の文字の大きさを変えることはなかったと思います。

「なあ」のように、長く伸ばして発音する音のことを「長音」といい、その書き方については、文化庁のホームページに掲載されている「現代仮名遣い」が参考になります。
そのページを見ると、長音では「あ」を使うとあり、小書きの「ぁ」については触れていません。小書きの「ぁ」を使う例は、「ヴイオリン」のような場合にのみ出てきます(「外来語の表記)のページを参照ください)。

「現代仮名遣い」は、「一般の社会生活における国語表記の目安・よりどころ」ですから、絶対に守らなくてはいけない、というものではありません。とはいえ、多くの人に読んでもらう文章は、基本にのっとる必要もあります。エッセイについても、現代仮名遣いに準じて書かれたものを多く目にしてきましたが、いつの間にか、小書きの「ぁ」が世の中に浸透していて、エッセイに登場しているのでした。

その背景を考えると、メールやLINEなどが影響しているように感じます。
短い文のやり取りに、顔文字(*^^*)や絵文字😊を入れて感情をプラスすることが、日常的に行われるようになりました。それと同様に、文字の大きさを変えることで、微妙な感情や雰囲気を伝えたくなったのかもしれません。「うるさいなあ」と書くより「うるさいなぁ」のほうが、ぼそっと言っているイメージがあります。「あらあ、こんにちは」より「あらぁ、こんにちは」のほうが、実際のセリフに近い響きがあります。
また、マンガには、「あぁあぁぁぁ」という叫びや、「あ」に濁点がついた字も登場するので、文字によるニュアンスの出し方を、無意識に感じているのかもしれません。
いろいろ複合した背景があるのでしょう。

言葉は時代と共に変化すると言いますが、文字の大きさも変化するのですね。
ちなみに、パソコンで、この小書きの「あ」を出すには、「xa」もしくは「la」と打ちます。