新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング
『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』(唐木 元著 インプレス 2015年8月発行)をご紹介します。
筆者の唐木さんは、ナタリーというポップカルチャーのニュースサイトで編集長を務め、ライターの新人研修を行ってきた方です。6年半の間に2万本の記事を校了した現場での経験と、社内の研修で伝えてきたことをベースに、本書は書かれたそうです。
77の項目の一番初めは、「良い文章とは完読される文章である」です。
この項目タイトルを見て、自分がいかに生ぬるい場でエッセイを書いていたかを、まず実感しました。趣味で書くエッセイは、仲間内で読み合うのが基本ですから、どんなエッセイでも最後まで読んでもらうことができます。しかし、本書が教える相手は、雑誌やウェブのライターです。記事を最後まで読んでもらうこと「完読」がいかに大変か。本書は、「完読されること」を究極の目標として設定しています。
項目15までは「書く前の準備」の説明が書かれていて、そこはエッセイとは少々方向性が違うようでした。しかし、項目16以降はほぼエッセイに通じる内容です。文章に磨きをかけ、読者の負担を取り除き、読者に伝わる丁寧な文章にしていくための方法が書かれています。注意すべきポイントを具体的にそしてシンプルに解説しています。「これはわかりやすい」と、本屋でページをめくったときに即購入を決めました。
項目のいくつかをご紹介します。
17 推敲の第一歩は重複チェック
重複を排除するだけで、文章は驚くほど変わるので、ひととおり書いたらまず重複チェックを始める。重複は、小さい単語レベル「○○の○○の○○の○○」から、文節レベル「……ので、……ので」、文末「……しました。……しました。……しました」など、あらゆるスケールで見つかる。発生率の一番高いエラーであり、そこを見直すことから他の問題点も見えてくる。
重複については、エッセイにおいてもしばしば指摘されますが、推敲で最初にチェックすべき重要ポイントなのだと、再認識しました。
31 余計な単語を削ってみる
冗長な文章をタイトに締める際には、接続詞・重複・「という」・代名詞・修飾語が削れないかをチェックしてみる。
接続詞や修飾語は何気なく使っていることも多いので、「削れないか」という目で疑うことは大切だと感じました。字数制限をオーバーしているときも、この方法で確認すると、字数をうまく減らせそうです。
49 体言止めは読者に負担を与える
体言止めはリズムを整える効能もあるが、乱用は禁物だ。「この教科書は8月7日に発売。」という文では、発売するのか、発売されるのか、されたのか、したのか、隠されている動詞を読者が判断しなくてはならない。読者を疲れさせ、読者が文章から離脱していく原因ともなる。
体言止めを使いすぎないようにしたいと私も思っていましたが、この項目を読んでその理由がはっきりわかりました。
エッセイを書いている人にとっては、本書に書かれていることの多くは、どこかで聞いた話かもしれません。とはいえ、文章を書く上での「基本的なこと」がわかりやすくまとまっている本は、強力な助っ人になります。
本書に書かれていること(特に項目16~63)をしっかり頭に入れておけば、知らない誰かにも完読してもらえるエッセイに仕上げることができそうです。