2月28日はエッセイ記念日
1533年2月28日は、エッセイの元祖と評されているフランスのミシェル・ド・モンテーニュの誕生日です。その日にちなんで、30年ほど前、私が所属する木村治美エッセイストグループ(KEG)が「エッセイ記念日」を制定しました。現在は、日本記念日協会の記念日登録は終了したようですが、ネット上ではまだ「2月28日はエッセイ記念日」と出てきます。
モンテーニュがエッセイの元祖とはどういうことなのでしょうか。恩師木村治美の本『エッセイを書きたいあなたに』(1989年12月 文藝春秋 )に詳しく書かれていました。簡単に要約すると、「エッセイという言葉を『あるテーマに関する適当な長さの作文』という意味で初めて用いたのがモンテーニュである」ということです。
モンテーニュは 1580年に 「Les Essais」を著し、フランス語の「エッセイ」という言葉をタイトルに使っているのです。その本は、日本語では『随想録』または『エセー』と訳されています。
そのエッセイの元祖の本は気になっていましたが、まだ手に取ってみたことはありませんでした。記念日に敬意を表して繙(ひもと)いてみようかと、その本について調べたところ、たとえば岩波文庫であれば全6巻です。ちらりとページを繰ってみましたが、とても軽い気持ちでぱらぱらと読めるものではないことが判明しました(想像はしていましたが)。
しかし、私のように途中で投げ出しそうな人のための本を見つけました。『モンテーニュ エセ―抄』宮下志朗編訳(2017年9月新装版 みすず書房)です。『エセ―』から11章だけを選び出し、250ページほどの1冊の本に収めてあります。あとがきには、読みやすい日本語をこころがけ、原文にはない改行をところどころに入れてあるとも書かれています。せめて、この抄訳を読んでみようと購入しました。
それでも、「まえがき」から苦労しました。1ページ半ほどの分量なのですが。
「わたしは、このわたしを描いている」「わたし自身が、わたしの本の題材」と、作品には「わたし」について書いたと強調します。これは現代のエッセイに通ずるところがあり、よくわかります。「至らない点や自然な姿が、社会的な礼節の許すかぎり、あからさまに描かれている」とは、つまり読み手を意識しているということでしょう。
しかし、本の題材がわたし自身だから、「こんな、たわいのない、むなしい主題のために、きみの暇な時間を使うなんて、理屈にあわない」とも書いています。つまり、こんな本を読むのは時間の無駄だよと、読者に向けて書いているのです。矛盾に満ちたこの「まえがき」をどう理解したらいいのか……。
このようにして、短い「まえがき」でも、何度も行ったり来たりしながら読んでいる状態です。少しずつ作品を読み進めてみるのですが、その「思索」を理解するのはなかなか難しい。抄訳でも、時間がかかっています。もし読み終えたら、参考書で紹介したいと思います。期待せずにお待ちください。