外国滞在中の思い出を書くには

海外に留学する高校生から、以下の質問を受けました。
留学先でのことをエッセイのような形で書き残したいと思っています。
1 書く内容について、なにかアドバイスはありますか?
その国について知らない人もいるでしょうから、歴史や気候などの説明も入れたほうがいいですか。
2 いつ書いたらいいでしょうか? 
留学中に書くか、それとも10か月後に留学を終えて帰国してからがいいですか。

留学中のことを書き残すのは、母親からのアドバイスでもあったようです。高校時代の若い感性で書いた留学体験記は、当人にとっても宝物になるでしょう。この質問に対する回答は一つではないと思いますが、以下のように私の考えを話しました。

1 書く内容について
はじめて訪れる国でのホームステイ、そして学校生活。すべてが新しいことで、まずは慣れるのに精いっぱいでしょうが、そのなかで、自分の心に強く残り、書かずにはいられないという思いにかられる場面に何度も遭遇するはず。それらを、ぜひ書いてほしい。
その国の気候や地理や歴史など、ガイドブックを見ればわかることは必要最小限でいいので、出会った人々のこと、日本との違いで驚いたこと、感心したこと、なんでも、自分の心を動かした出来事や場面を書くといいのではないか。

そう答えたときに、質問者からさらなる質問がありました。
「自分の心が動いたことを書いたとして、読み手はそれをおもしろいと思うのでしょうか
自分の基準が読み手に通じるのか、心配しているようでした。
高校生の海外留学の話に対して、読み手は最初は単純にへえーと関心をもつところから入るのでしょうが、書き手の気持ちが伝わってきたら、一緒に発見したり冒険したりの気分になり、引き込まれるようにして読むことでしょう。書き手の書きたいという強い思いが文章に込められていたら、必ずや読者に届くと、エッセイを長いこと書いたり読んだりしてきて感じています。

2 いつ書くか
滞在中に書くのと、10か月後に帰国してから書くのとでは、けっこうな違いがありそうです。滞在中に書けば、臨場感や熱量が文章を生き生きとさせるでしょうが、反面、その出来事の全体像を見ながら書くのはむずかしい。帰国後であれば、全体を見渡して構成を考えながら、読み物としてまとまったものを書けるかもしれませんが、熱量は下がってしまう可能性がある。どちらが良い・悪いはないと思います。
私の師木村治美の著書『黄昏のロンドンから』は、ロンドン滞在記です。日本の雑誌という発表の場があって、日本への手紙という形で滞在中に書いたそうです。私自身のエッセイの始まりは、6年間のアメリカ滞在を終えて帰国してから書いた滞在記です。滞在中に書くことを思いつかなかったからですが、心に強く残った出来事は忘れることなく、文章に残すことができました。
今回の質問者は、留学に行く前から書き残したいという気持ちがあるのですから、滞在中に書くことはできそうです。とはいえ、学業に時間をとられ、長い文章を書く余裕がないかもしれません。また、締め切りがなければなかなか書けないものです。その場合は、とにかく事あるごとにメモしておくことが大事だと思います。滞在中に気になったこと、心が動いたこと、見たこと、聞いたこと。資料があれば、それも保管しておきたい。後日書くとき、絶対に役立ちます。また、親や友人に近況報告を送る際に、少ししっかりと気持ちを書き入れ、それらのテキストを保存しておく。そうすれば、まとまった時間が取れたときに、それが帰国後であっても、深い思いまで書くことができるのではないでしょうか。

高校生の質問者に役立つアドバイスになったかどうか。充実した留学生活を送り、滞在エッセイも楽しく書き上げることを祈っています。